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まるで本物の法廷?アガサ・クリスティ「検察側の証人」で魅せられた舞台の魔法

Witness for the Prosecution

僕は普段あまり(というか全く)舞台に足を運ぶ習慣がないのですが、妻に誘われ「Witness for the Prosecution」のロンドン公演を観に行ってきました。

観劇なんて小学生の頃に学校行事で観た能楽がおそらく一番新しい記憶。「なんじゃこりゃ」と思いながら宿題の感想文をテキトーに書いた気がします。

そんな少年も今では30代。大人になって初めて観た舞台「Witness for the Prosecution」では、そのユニークで心躍る体験にすっかり魅了されてしまったのでした。

Ichi
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なんじゃこりゃ!(ポジティブ)

同じような観劇初心者の方にもおすすめしたい本作品。今回は感想文の宿題もないけど、せっかくなので僕なりに感じたその魅力についてお話します。

Witness for the Prosecution とは

「Witness for the Prosecution」は、言わずと知れたイギリスの推理作家アガサ・クリスティ(Agatha Christie)による短編小説およびそれを元にした戯曲で、邦題は「検察側の証人」。物語のあらすじは次の通りです。

街で知り合い親しくなった金持ちのオールドミスと青年レナード。ある夜そのオールドミスが撲殺された。状況証拠は容疑者の青年に明らかに不利。金が目当てだとすれば動機も充分。しかも、彼を救えるはずの妻がなんと夫の犯行を裏付ける証言を……展開の見事さと驚愕の結末。裁判劇の代表作。

引用:早川書房

戯曲もアガサ・クリスティ自身によって書かれ、小説とはいくらかストーリーが異なります。初演は1953年で、僕が観た本公演は2017年にスタートしたらしい。

ロンドン公演の魅力

会場はウェストミンスター・ブリッジにほど近いロンドン・カウンティ・ホール(London County Hall)。1920年代にグレーター・ロンドンの議会庁舎として建設されたそうな。

そこに一歩足を踏み入れた途端、歴史ある建築物ならではの重厚な雰囲気を感じます。まずはそんな非日常の緊張感を、バーカウンターで買ったビールで台無しにしましょう。

Ichi
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ぷはぁ~落ち着く

そしたらいよいよ舞台のある一室へ入るのですが、そこは当時実際に使用されていたという議場でした。そう、僕たち観客はその議場の議員席に座り、まるで本当に裁判を傍聴しているかのように観劇するのです。

上等な木と革で出来たその議席は座るだけでテンションがあがり、「もうここに座ってビール飲むだけでいっか」なんて全然面白くないボケも口走っちゃいました。

そうこうしている内にいよいよ開演。演者の容赦ないブリティッシュアクセントに少し面食らいつつも、しかしすぐに慣れて物語に没頭していきます。

ウェストエンドの大人気ミュージカルたち(観たことない)と比べるとその舞台規模はかなりこぢんまりとしたもので、そのおかげで俳優たちの細かな表情、目線、声色から息づかいまで間近で堪能できました。

特にレナードとその妻を演じた、Ben GalvinさんとIsabel Della-Portaさん。彼らの “これぞ舞台” と言わんばかりの豊かな表現力は圧巻で、強く印象に残っています。

そして個人的に興味深かったのは場面転換。俳優さんたち自らによって行われるのですが、その小道具一つ一つを運ぶ所作が見事で物語の世界観をまったく崩しません。

ストーリーの多くを占める裁判シーンでは観客も陪審員として参加できる(後述します)など、より近い心理的距離で物語を体感できる工夫がされていました。

そうして固唾を飲んだり笑ったりしながら約2時間の物語はあっという間に終わりを迎え、僕も妻もやや興奮気味のままロンドンカウンティホールを後にしました。

おわりに

ちなみに僕たちが予約したのは1階、舞台正面にある通路沿いの席でした。とても観やすくおすすめできる位置でしたよ。2階席もありましたが柱に邪魔されて見辛くなる席もありそうでした。

また舞台左奥の陪審員席も予約可能で、そこで陪審員長に選ばれた観客のひとりは裁判の判決を言い渡すことができます。少し高額にはなりますがきっと面白い体験になると思いますので、予算の許す方はぜひ。

またイギリス訛りも満喫できる本作ですが、それゆえ英語についていけるか不安な方もいるかもしれません。物語自体はそんなに複雑なものではないですが、不安な方は小説で予習しても良いかもしれません。短編なのでサクッと読めると思いますよ。